東海道五十三次 歩いてます。→歩きました。

2015年秋 お江戸・日本橋から歩き始め、2016年秋 京・三条大橋まで踏破しました。

06. そこに山城があるから

早朝から歩き続けること3時間半、疲労の色が濃くなり おなかも空いてきました。
しかし今、眼前に構える山城 (丸子城址) に登りたいのです。
勢いよく階段を登っていきます。振り返ると、麓の集落が眼下に見えます。
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登り始めてまだ数分しか経っていませんが、随分と登ってきたように感じます。

どこまでも山道が続きます。人の気配はありません。辺りはとても静かです。

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足は疲労で震え、空腹と喉の渇きで思考回路も鈍ってきます。気を緩めると足を踏み外しそうです。
3月初旬なのに暑い… お天気も良く、ずっと歩いていたからでしょうか。
ひとまず水分を補給します。手持ちの食糧は飴3個。朝は おにぎり1個だけ食べました。丁子屋さんでの昼食を楽しみにしていたのです。
その場にしゃがみ込み、足を休めながら今置かれている状況について考えます。

もうお昼近いのに なぜ山の上にいるのだろう。
ほんの少し散策し、丁子屋さんで食事をし、宇津ノ谷峠に勇み行くはずだった。
あー、ピンチ。
これから
山を下りて、
宇津ノ谷まで1時間以上歩き、
峠をいったん越えてから 、
同じ峠を再び越えながら引き返し、
バスに乗り、
各駅停車の列車を乗り継ぎ、
数時間かけて帰宅し、
明日いつも通り仕事に行く。
そんな現実が信じられない。

麓から離れ 静かな自然の中に佇み、今このひととき 日常から遠ざかっている感覚。
なぜ今回最大の目的地である宇津ノ谷峠に行く前に、別の山に登ってしまったのだろう。でも興味を惹かれたから 登らずにはいられなかった。そして今ここにいる事実。

気を取り直して立ち上がり、再び歩き始めます。
ほどなくして ようやく開けた場所に出ました。
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いくつもの曲輪 (くるわ) の跡があります。
室町〜戦国時代にかけて、今川氏・武田氏の支配下にあった往時を偲びます。

すると、今登ってきた方向から人が近づいてくる気配がしました。

-こんにちは、どちらから?
--こんにちは、用宗駅から歩いてきました。
-えっ! 用宗から!?
--はい、早朝に用宗漁港に行った後 安倍川駅から丸子宿まで歩き、お寺などを見ていたら 丸子城の自然歩道 という表示があるので、興味をもって気軽に登ってきたのですが… まさかこんなに大変な道だとは思いませんでした。

-結構な距離を歩いてきたんだねぇ。
と驚かれました。
この近辺に詳しそうな男性の方でした。丸子城には何度も来られているようで、
-向こう側の土塁や お堀 のあたりに行くと いろいろ発見があるんだよ。
と教えてくださいました。
しかし私には、これ以上見てまわる気力・体力は残っていません。

--これから丁子屋さんで食事してから、宇津ノ谷峠に行こうと思ってるんです。
-なるほど丁子屋さんね。宇津ノ谷は良いところだよ〜。でも今から行くのは無理じゃないかな。
--無理ですかね〜
(いえいえ、今回の主要目的地には是非とも行かねばならないのです。)
と心の中で反発しましたが…
「では お気をつけて。」と各々の旅路に戻ると、やはり無理かもしれないと気弱になってきます。

例えば強行突破で、丁子屋さんに寄らずに宇津ノ谷峠に行くならば、目的は果たせるかもしれません。
しかし疲労と空腹に さいなまれた我が身、このまま歩いて峠を越えるのは危険です。確実に倒れます。

かと言って 今から丁子屋さんに向かうと 到着する頃はちょうどお昼真っ只中、行列待ちは必至です。宇津ノ谷峠に足を運ぶ時間が無くなります。どちらも絶対に寄りたいと心に決めているので、諦めることはできません。

… そうか、今日1日で全て成し遂げようとするから無理なんだ。
こうなったら宇津ノ谷へは また別の日に出直そう。
いつにしよう。今度の夏… いや、そんなに先まで待てない。
この春、青春18きっぷは まだ使える。都合がつくのは… 来週のみ。来週かぁ…

様々な思いが交錯し、思い悩むこと
… 数秒。

よし、来週土曜日 (この日から6日後) に また日帰りで来よう。
すたこらさっさと山を下り、丁子屋さんを目指します。

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咲き誇る 花のアーチを くぐり抜け
気分晴れやか 城を背にする

※ 丸子城址は標高136メートル
これほどに苦心した様子を書き述べてきましたが、登山から下山まで時間にして1時間足らず。
コンディションが整っているときはともかく、当時は非常に困難な出来事に感じました。
東海道を歩き始め いくつもの峠を越え 歩き慣れてきた現在の私ならば、もう少し余裕を持って登れることでしょう。