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東海道五十三次 歩いてます。→歩きました。

2015年秋 お江戸・日本橋から歩き始め、2016年秋 京・三条大橋まで踏破しました。

36. 窮地に立たされてこそ

今、大変な苦境に追い込まれています。
大切な1枚の地図を どこかで落としてしまいました。

頭の中は真っ白になり、目の前は真っ暗です。
けれど このまま立ち止まっていても始まらない、引き返して地図を探そう…

暗い気持ちで向き直り、重い足取りで今来た道を戻り始めた ちょうどその時。

先ほど休憩所で挨拶を交わした男性が、こちらに向かって歩いてきます。
あの人も、江戸から京に向かって歩いていたんだ。
そうだ、ちょっと尋ねてみよう。
地図を見かけませんでしたか、と。

小走りに駆け寄り、藁にもすがる思いで
「すみません…」と声をかけた その瞬間。

折りたたまれた紙切れを 右手にサッと取り出して、
「これかな?」

!!

ああ、神様 仏様。
そうです! これです!

「ありがとうございます!
落として とても困っていたんです。
すごく助かりました。
本当にありがとうございました!」

「気をつけてね。」
多くを語らず 颯爽と立ち去る "恩人さん" の後ろ姿を、私は感謝と感激の気持ちで見送ります。

試練が続く箱根の山。
人の心の優しさに触れることができ、折れかけた私の心は あたたかさで満たされます。

よし、この先も頑張って歩こう。

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箱根越えの命綱。
今度はしっかりと鞄に仕舞い込みます。

国道に出てしばらく歩き、再び旧街道石畳の道へ。

施工平 (せこうだいら) という見晴らしの良い場所に立ち寄ります。
全体的に曇り空、富士山は見えませんが これから目指す三島の町を遠くに望みます。

さて、静かな空間で いつまでも景色を眺めている場合ではありません。

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先へ先へと進みます。

そして辿り着いたのが「山中城跡」。

山中城」は 小田原防備のために 北条氏によって築城されましたが、豊臣秀吉による小田原征伐の際、圧倒的な兵力差で落城したのです。
往時を思いながら、広い敷地内の曲輪や堀の跡を 足早に見て歩きます。

時刻は まもなく15時。
"大切な地図" を見ると、箱根西坂の行程は まだ半分以上残っています。

とにかく先を急ぎます。

旧街道を歩いたり 国道を歩いたり、道は交互に続きます。

国道の とある場所で、道路工事の現場に遭遇します。
"旧街道は工事で通行止め、この先しばらく国道を歩いてください" とのこと。

えっ
旧街道を歩けないの?

意表をつかれ戸惑いましたが、すぐに気持ちを切り替えます。
思い悩む暇はありません。
今さら引き返すわけにもいかず、通れる道を進むしかないのです。

工事車輌が行き交う中、現場の誘導員さんに導かれるがまま "国道の側面に簡易的に作られた歩行スペース" を歩きます。

車の往来は激しく、工事の騒音が鳴り響いています。
「この状況下で歩くのも 試練の一環なのだろうか…」

工事現場を通り過ぎて しばらく行くと「富士見平」。
"松尾芭蕉の句碑" があります。
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霧しぐれ 富士を見ぬ日ぞ 面白き

芭蕉が箱根越えをしたときには悪天候で富士山が見えなかったようですが、心で感じていたようです。

私が富士見平を通ったときは、もしかすると富士山が見えていたのかもしれません。
しかし 様々な疲労により心の余裕を失いつつあった当時、目でも心でも見ることはできませんでした。

少し追い詰められた気持ちで歩いていると、
人生の先輩たちが20名ほど 集団でこちらに向かってきます。
"東海道 歩こう会"のような集まりだと思われます。
先輩たちを目の前にした途端、先程までの塞ぎかけた気持ちと疲れは嘘のように まるで平気な風を装います。
「箱根の山越えなんて、別にたいしたことありませんから。」と言わんばかりに、すたすたと歩き すれ違います。

箱根越え、まだまだ先は長いのです。

先程から 旧街道の通行止めにより国道を歩いていますが、そのために歩く距離は当初より長くなっています。

右手に広大な施設が見えてきました。
道の駅か、何かのイベント施設でしょうか?
開業前のため 本日は招待客のみが入れるようです。

後に分かったことですが、この施設は
「三島スカイウォーク」
2015年12月14日オープンの ちょうど2日前だったのです。
"日本一長い大吊橋" から、"日本一高い富士山" と "日本一深い駿河湾" を楽しめるそうです。

期せずして話題のスポットに立ち寄れました。
招待客しか入れないので残念に思いましたが、日没が差し迫り 時間的余裕がないこのとき、むしろ入れなくて助かりました。

スカイウォークと道を挟んだ向こう側には、旧街道の入口が見えます。
工事による通行止めの区間は終わり、この先は旧街道を歩けるようです。

さて、ここで本日お馴染みとなった問題が発生します。
国道を 渡りたいのに 渡れない。

これまで来た道には、信号も横断歩道もありませんでした。(多分)
この先も、見える範囲に信号機はありません。
少し歩いてみれば 確実に横断できる場所があるのかもしれません。
しかし そこまで確認しに行って、また戻ってくるだけの気力は残されていません。

ああ、またこの展開…

念入りに左右を何度も確認し、本日 幾度目かの "決死の猛ダッシュ" で横断します。

この数時間で "決死の覚悟" が平常になってきたようです。