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東海道五十三次 歩いてます。→歩きました。

2015年秋 お江戸・日本橋から歩き始め、2016年秋 京・三条大橋まで踏破しました。

49. 富士山を独り占め - 御殿山さくらつりばし

蒲原 (かんばら) は、"東海道五十三次の旅" において 非常に思い出深い場所の1つとなりました。

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東名高速道路を渡り 富士市から静岡市に入ります。
住宅地の坂道を勢いよく下って行くと そこは「蒲原宿」の東木戸 (ひがしきど)、宿場の江戸側の出入口です。

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東海道五十三次歩きの目印。
静岡県内では このデザインの案内板を度々見かけます。

蒲原宿で特に興味を惹かれたのが
「御殿山 (ごてんやま)」と「さくらつり橋」
なんだか素敵な響きです。
かつて徳川家康の " 蒲原御殿 "  で使う薪などを採った山であったため この名が付いたとのこと。
そして、桜の名所であるとか。

街道から右に入って行き、登山口を探します。
どこから登ればよいのか迷っていたところ、地元の方に巡り会います。

小ぶりで愛らしい わんころ を連れて お散歩している 気品のあるご婦人。

少し勇気を出して尋ねてみます。
「あの… すみません。さくらつり橋にはどうやって行けば良いですか?」

すると、とても優しい笑顔で親切に教えてくださいます。
「何かあったら大声出すのよ。すぐに飛んで来るから。気をつけてね。」

お礼を言いながら 登り口に向かい、
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足取り軽く登って行きます。
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ふと顔を上げると、坂道の上に1人の男性の姿が。
「こんにちは」

言葉を交わすうち、私は声を弾ませ伝えていました。
「東京から東海道五十三次を歩いていて、電車移動には青春18きっぷを利用しているんです。今日も日帰りで来ています。」

「各駅停車の電車で… そういうのいいなぁ、僕は そういうの好きだなぁ。
ゆっくり時間をかけて移動するのは面白いでしょう?」

"おじいさん" とお呼びするなんてとんでもない、足腰が非常にしっかりしておられる "人生の大先輩" です。
御殿山周辺には何度も足を運ばれていて、今日は何処其処のルートを周っているのだそう。

広い見識と 長年の経験を積み重ねてこられたことをうかがわせる風采です。
御年84歳。

「ここから見てごらん。あれが伊豆半島で… 」
はるか見下ろす景色は とても綺麗です。
私の知識不足のため、せっかく教えていただいたにも関わらず 分からない地名もありました。

「物事というのは 頭の中で考えているだけじゃなくてね、ぶつかってみて 初めて分かることがあるんだ。

自分がそのとき感じたこと・得たものを貯めて (蓄積して) いくと良いんだよ。」

私の人生の積み重ねは 大先輩に到底及びませんが、言葉の1つひとつが心に深く響きます。

束の間ですが 共に山道を登ります。

「じゃあ僕はこっちに行くから。」

お会いできて良かった。
今後の人生における何かが、心の中で揺り動かされました。

そして私は「さくらつり橋」へ。
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橋を渡り さらに登って行くと
「御殿山広場」に辿り着きます。

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広い空、あおく深い駿河湾と、沿岸に建ち並ぶ工場群。

広場の先は「狼煙場 (のろしば)」です。
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蒲原城の狼煙を上げていた場所とのこと。
(本日は蒲原城まで足を延ばせませんでしたが、また日を改めて… )

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今日は なんて素晴らしい日なのでしょうか。
誰もいない空間で富士山を独占し、満ち足りた気分になります。

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物見台に昇ってみたものの、急角度のハシゴを降りるときに足が震えます。

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この景色、いつまで見ても飽きません。
甘いパン と 塩気のあるパン、麓にある手作りパン屋さんで仕入れてきた甲斐がありました。

次第に西から冬の陽に照らされ 赤く染まりゆく富士と麓の町並みを見ながら、ただただ 感慨にふけることだけに 時を費やします。

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広場の外れに ローラー滑り台 を見つけます。
滑ってみたい、けれど摩擦でズボンが破れるのではないかと懸念されるため…
腕と脚に力をこめて 少しずつ滑ります。

…ッシャーン… … …

気を緩めた隙に 一瞬にして下まで辿り着いてしまいました。
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依然として人の気配は全くありません。
本当に ずっといつまでも 滞在していたい気持ちでいっぱいなのですが、すぐそこまでタイムリミットが迫っています。
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もう1つの "ローラーではない滑り台" を滑ることなく、もと来た道を下り始めます。
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さくらつり橋まで戻ってきました。
すると突然…

「きゃぁーっ!!」

女性がこちらを見て叫んでいます。

「びっくりしたぁー!」

先方の身になって考えてみると、近所を散歩中に得体の知れない人 (もしや動物?) が突然現れる… これは極力関わりたくない状況です。

「この山、イノシシが出ることもあるんですよ。勇気ありますね!」

… いいえ、勇気ではありません。無知なだけです。

20代と思われる女性で、親戚だという5歳の女の子と一緒でした。

例により、東海道五十三次を歩いているという話をして、今日は吉原から歩いて来たんですよ、と。

今回 吉原で食べそびれた " つけナポリタン" ですが、彼女はもちろん食べたことがあるそうです。

「うちは、あの◯◯色の屋根の家なんですよ。」

ほんの短い時間でしたが、一緒に山を下りながら お互いに休むことなく話し続けました。

麓から一番近いのは「新蒲原駅」ですが、今後の行程を考えて 今日は1つ先の「蒲原駅」まで行かねばなりません。

彼女たちに見送られながら、日が翳りつつある蒲原の宿場を 足早に通り過ぎます。

街道をゆっくり散策するつもりでしたが、御殿山に思いのほか長居してしまいました。

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宿場の西 (京側) の出入口である 西木戸 を過ぎ、あとは県道396号を一直線。
右も左も見ることなく、ひたすらに駅を目指します。

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駆け足で電車に乗り込み、17時半には車窓から、暗闇に覆われた蒲原の町に 別れを告げていました。


さくらつりばしに呼び寄せられて
偶然出会った名も知らぬ人たち。

さくら咲くころに訪れたなら
再びお目にかかれるでしょうか。

いつの日か、きっと。

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★第9日目
2015年12月26日 (土)
吉原→蒲原
   資料上の距離 : 11.1km
   歩数計 (1日) : 23.53km / 36,844歩